俺は4時15分。

バッキー・イノウエとワイワイナワイモ。

動物は水場に集まるのだ。

f:id:vackey:20150307181253j:plain 俺は三十歳ぐらいからコーヒーを飲まないようにしていた。コーヒーが好きだったけれど酒の方が好きだからコーヒーぐらい我慢しようとした。酒と油と塩とポン酢が生き甲斐で麺類が主食の俺は煙草も不屈に吸いまくっていた。そのうえにコーヒー連呼はあまりにも胃がかわいそうな気がしたのでコーヒーは我慢した。なかなか我慢出来なかったがコーヒーを飲むと、かしこくなるからと、のたうちまわってやめた。それでも街の先輩の事務所なんかに行くときれいなお姉さんや奥さんがおいしいコーヒーを出してくれるのでそれは飲んだ。そうなると街の喫茶店に行く機会が減った。その代わりに街のうどん屋に行く回数が増えた。そこが俺の垢抜けないところなんだろう。
 そうこうしているうちに気がつけば街にスターバックスドトール的な店が増殖して新聞や雑誌やテレビやカレーやナポリタンのある街の喫茶店が急に少なくなった。俺は泣いた。俺は泣いている。
 小学生の頃は指が黄色くなった親父を呼びに近所の喫茶店によく行った。中学の頃はこわい先輩達に喫茶店へ呼び出された。高校の頃はなんだかよくわからないが繁華街の様々な喫茶店に入り浸った。ロックばかりの店やジャズ喫茶やマッチ欲しさに行った店、私立の女子高の奴らがうようよいる喫茶店や街の奇人がたくさん集う店などに毎日毎日修行のように行っていた。
 それがいつのまにか酒のある店になった。そして昼間は喫茶店に行き、夜は酒の店に行くようになった。忙しいけどそれが俺のすべてだ。
 今は自ら喫茶店には行かないけれど近所のご年配から呼び出されるのは朝のイノダコーヒ本店だし、昼下がりは三条店のカウンター、ご婦人からのお誘いはスマートコーヒーが多いし、パ・リーグの先輩は市役所の北の喫茶エイトに一杯のコーヒーで少なくとも一時間以上は週刊誌を読んでいる。
 街の喫茶店が少なくなってきていることは街に水がなくなってきているのだと思う。動物は水場に集まるのだ。俺のすべては水である。いつまでもあると思うな親と金か。さあ喫茶店に行こう。