俺は4時15分。

バッキー・イノウエとワイワイナワイモ。

昼からの安酒場には、いい服を着ていこう。

 最近、安い酒場がブームになっているようだ。安い酒場というかそんな店が流行るのは普通に考えれば当たり前のような気がするけれど、この頃の感じは社会ごと安い酒場に流れているような気がしてチョット俺の頭、いわゆるワイワイナワイモにハテナマークが出ている。
 京都でも昼から安くで飲める居酒屋がここ数年で増えてきたし街が賑やかになっていいのだが、なんだかしっくりこないのはなぜだろう。俺はヘンコなのか。しっくりこない理由をチョット考えてみた。
 こんな俺がいうのもなんだが、昼間から立ち飲みや安い居酒屋で飲むことがなんだかフルオープンになってきてつまらなく思っている。平日の昼間は働くものなのである。例え平日が休みの人でも、今日は平日だからと気兼ねしなくてはならないと思う。
 そしてどうしても飲みたければ、俺の場合はメシを食べに行って飲んでいた。寿司屋や食堂で飲んだ。お好み焼きを食いに行けばスジ焼やホソ焼やイカや貝を焼いてもらって飲んだ。大阪に行けば午前中からやっているフグ屋で飲んだ。そば屋はこわいのであんまり飲みには行かないが裏寺の「まつもと」や近所のそば屋にはよく寄せてもらう。
 昼から居酒屋で飲むのは誰かに叱られそうな気がするが、メシ屋で行きがかりじょう的に酒を飲むのは叱られても言い訳が出来るのだ。それを知っているからメシ屋での昼酒はセーフなんだと思っているのだろう。
 それでは午前11時から開店する大阪のリーチバーで昼下がりから飲むのはどうなるんだ。お前は平日の3時頃に終わることを目論んで中之島やロイヤルホテルで打合せをしているだろう、それはどうなるんだと、もうひとりの俺が俺を睨んでいる。
 バーはまた別の話なのである。バーには昼からも宵の口もない。そこにバーがあり、店が開いているなら誰に叱られることもない。俺たちはバーと対峙するだけだ。そこで飲むことのスタイルも含めて責任をとらねばならないから昼からのバーや宵の口のバーはその機会を得た瞬間にゴーという選択肢しかない。
 俺はこの雑誌が25年前に創刊して以来、特集記事や特別なミッション(今から考えてもそのミッションの意図がよくわからない)などを与えられて、街や酒やメシについて気が遠くなるほど書かせてもらってきた。
 もちろんその中には、昼酒や、昼下りの酒場、無断欠勤した午後の酒、待ち合わせまでに酔う男、酒バカではなく酒場バカでありたい、など親が泣くようなミッションの数々を25年間もこなしてきた。そんな俺が街のクライシスを感じているのだ。
 素人が昼から居酒屋で当たり前のように飲んだらあかん。もっと辛抱しなはれ。辛抱しただけ夜の酒がうまくなる。
 どうしても昼から飲まなあかんのなら、バシッと服を考えて行かなあかん。
   昼に飲んでいてキマるスタイルは、夜のそれよりはるかに難しい。上等のスーツや派手な服は昼の店で浮くし、ジャージや賢い低価格洋服では安い酒場に溶けてしまう。
   ちなみに無精者の俺は、ええ服をヘビーローテションで着ているのでカラダの型や匂いが染み込んだ、言わば俺自身の着ぐるみを作るときのような服や靴で飲んでいるのだ。四十年あまり街で飲んできてたどり着いたスタイルというより、行きがかりじょうそうなったのだ。
 もうひとつ最後にいっておこう。昼に飲むならそこでは出来るだけ笑わない方がいい。始めから笑ってしまえば台無しだ。笑って飲むのはまた別の話なのである。いよいよ俺もワイワイナワイモになってきた。あー、というしかない。f:id:vackey:20141108184808j:plain