俺は4時15分。

バッキー・イノウエとワイワイナワイモ。

ケガをしなくなったことについて。

 子供の頃はよくケガをした。膝や肘にはいつも赤黒いカサブタがあったし、指もよく切った。中学や高校に行くようになると膝や肘のカサブタどころではないもう少しきついケガをするようになった。青年になってからもバイトや仕事の種類に関係なくケガはしていたと思う。
 それがどうだろう、年々ケガをしなくなってきた。私は今、50代だがほとんど切り傷や擦り傷はしなくなった。それを近所の居酒屋の私と同世代の主人にいうと「そういうたらワシもケガせんようになったなあ。指切ったん5年以上ないな。その分いろいろ痛い思いをしてるけどな」と言って魚をさばきながら笑っていた。
 漬物屋を営んでいる私の場合、野菜を洗い、杉樽やポリ樽を洗ったり動かしたりして、道具や店の修繕を毎日のようにしているのでケガや指を切る可能性はオフィスワークよりかなり高い。居酒屋の主人にしてもそうだろう。
 ではなぜケガをしなくなったのか。それは立つことが出来るようになり自由に身体を動かせるようになった5歳の頃から40年50年以上かけてなんだか黒帯になったのだと思う。走ることは10代の時の方が速かった。今はあの頃の半分以下のスピードでしか走れなくなっている。その分、我々は40年以上かけて何かを会得したのだと思う。
 こんなことはあらためて私みたいなものがいうことではないが、何かが減る分、何かが増えるのだ。だとしたら目の前にあるガラスのコップに入った酒が減って何が増えるのだ。ここは洒落ですますところではない。しっかり考えろイノウエ。イノウエのイノはイノベーションのイノだと自慢気にいっていたじゃないか。コップの酒が減って何が増えるのかさあ答えてみろ。
 二十代の頃ならコップの酒が減る分だけ二度とない時間が増えるなどといきって答えていただろう。しかし五十代の今、目の前の酒が減る分だけ気づくことが増える。酒が気づかせてくれるのではない。いわば酒を飲めば黒帯になるのである。しかし気づく力が増えることは有り難いことだが酒飲みの場合たいがいそれは錯覚である。しかも酒飲みが黒帯になるほど面倒なことはない。ただ、酒を飲むことによって小さなケガをし続けることで大きなケガを回避することは出来るのだと思う。
 ケガすることは様々なことを現している。
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